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    NC2 マツダ ロードスター試乗レポート

 

 

   “運転の楽しさ”を是非知ってほしい

マツダのロードスターは世界で最も良く売れているライトウエイトスポーツだ。平成元年にデビューした初代モデルは、当時のバブル景気のおかげもあって日本では月に数千台が売れるヒットモデルになったし、日本車ブームも手伝って、世界的にもとても良く売れた。そればかりか、ポルシェのボクスターからフィアットのバルケッタに至るまで、世界中の自動車メーカーがロードスターに追従するライトウエイトスポーツを次々に投入するキッカケにもなった。

ロードスターが大ヒットしたのは運転することの楽しさを見事に具現化して見せたことが大きな理由で、今では当時のような売れ行きではなくなったが、根強いロードスターファンに支えられて安定し

た売れ行きを続けている。
また、マツダのクルマ作りを象徴するアイコン的な存在になっている。

その意味でロードスターはマツダにとって重要なクルマであり、今回のマイナーチェンジにも相当に力が入れられた。ロードスターには手頃な価格で買えるスポーツカーという性格もあるため、必ずしもお金をかけたマイナーチェンジということではないが、内外装のデザインからエンジン、トランスミッション、サスペンションなどのメカニズムまで、幅広く手が入れられたのが今回のマイナーチェンジだった。これによってさらに魅力アップしたのが新しいロードスターである。

 

   空力を重視したデザイン変更を実施

今回はマイナーチェンジなのでデザイン面での大きな変更はないが、ロードスターの価値を高める心憎い変更がいくつか行なわれている。よくありがちなランプ周りのデザインを変更するだけとは違って、“変更するだけの意味のあるデザイン変更”が行われている。

フロントバンパーの左右の突端部分や、リヤのコンビネーションランプの形状変更が行われたが、これらはボディから少し出っ張るような形でデザインされている。なぜそのようにしたかといえば、それが空力特性の向上につながるからだ。特にリヤ部分は、クルマの後方に発生する空気の渦を抑制することができ、それがクルマの走りを安定させるという新しい空力的な知見をベースに実施

されたものだ。
フロントグリルの形状を五角形にしたのはマツダ車としてのアイデンティティを明確にしたものだし、バンパーの形状変更が躍動感というか力強さを感じさせるものになったのも大きな変更点だ。
またソフトトップとリトラクタブルハードトップ(以下、RHT)の個性分けが進められたのも今回のモデルの特徴。これはデザインだけのことではないが、デザイン的にもフロントグリル、ヘッドランプ部分やフォグランプ部分、ドアハンドル、ハイマウントストップランプなどに相違点が設けられている。 インテリアではカラーリングの変更や、メーターパネルの変更で質感を高めたほか、オプションでレカロ製のバケットシートを設定した。

 

 

   ホントに気持ちがいい!の一言に尽きる走る

ロードスターを走らせると、改めて運転することの楽しさを感じた。このクルマは自分が操っているという確かな実感を持てるクルマだ。こうしたクルマを体験したなら若者のクルマ離れなんてなくなるのに、そんな気持ちにさせられた。

それはともかく、新しいロードスターではまずエンジンが気持ち良い。アクセルワークに応じてタコメーターの針がきれいに立ち上がって行き、7500回転からのレッドゾーンまできっちり回るからだ。これは鍛造クランクシャフトを採用した(マニュアル車)ことによるものだという。エンジンの回転上限が500回転高められると同時に、余分な振動や騒音を出すことなく上限まで使えるようになったことで、気持ち良さが増している。

アクセルワークに応じて盛り上がるエンジン音も変わった。これはエンジンの吸気時に発生する音を室内に取り込む機構が採用された(ソフトトップのみ、RHTはオプション)ためで、ちょっと細工をしすぎといった感がないでもないが、盛り上がるエンジン音に気持ちも高まっていく。
トランスミッションはAT車のステアリングスイッチが変更され、マニュアルモードを選択しなくてもスイッチを操作するだけで一時的にマニュアルモードになるようにしたほか、横Gを感知したときには余分な変速を抑えるような制御も加わった。コーナーでアクセルを緩めたときなど、簡単にシフトアップしないので、立ち上がりの加速がスムーズ得られるようになった。 足回りも普通はマイナーチェンジではやらないような改良が行われた。タイヤの取り付け部分を変更することでロールセンターを下げ、ステアリングを切り始めたときの自然なフィールを実現している。首都高のカーブなどを走っても、違和感のない自然な走行姿勢に好感が持てた。

 

 

   “運転の楽しさ”を是非知ってほしい

今回のマイナーチェンジで一段と魅力アップしたロードスターだが、ソフトトップとRHTの個性分けがいろいろな面で進められた点が注目される。

従来はソフトトップに対して後からRHTが追加されたので、ハードトップになって電動式になることに意義があった。それが定着した今となっては、RHTにはさらにRHTらしさが求められるようになったため、RHTはややラグジュアリーな方向に改良が進められた。

ロードスターの基本はあくまでもソフトトップにあると思うが、より実用的でクーペ風の使い方が可能なRHTを求めるユーザーも確実にいる。

そうしたユーザーが求めるのはクーペらしい静粛性や快適性だったりするわけで、そうした個性が明確にされた。
RHTだけに防音材や制振材が採用されたのが代表例で、これによってロードノイズを抑えた静かな走りが実現された。高速クルージングのときなどはまだまだ騒音を感じるが、日常ユースでは十分に快適な走りが可能になっている。さらにRHTを選ぶユーザーはAT車を選ぶ率が高くなるが、AT車の変速フィールなども改善されている。

ロードスターといえば、この項の最初に結論を書いたように走ることの楽しさを感じられるクルマの代表なので、やはりマニュアル車を選ぶのが基本になる。でも、今回のモデルではAT車が進化すると同時にRHTの快適性が高まったので、その組み合わせを選ぶのもアリになったように思う。価格は少し上がったが、まだまだ手頃な価格で買えるライトウエイトスポーツという基本的な性格は損なわれていない。このクルマを経験すると、その後のクルマ選びやカーライフの楽しみ方が違ってくる、だから一度は乗っておきたい、ロードスターはそんなクルマである。

 

 

 

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