車重は25kg ‘も’
増加。CO2排気量は22g/km増え、燃費は1.5km/?悪化。‘ペナルティ’
と表現するに差し支えないだろう。
一方、リア・マウントのLSD、フロント・ストラット・ブレースが英国仕様の2.0gモデルに標準採用というのは魅力的である。
‘スポーツ’
グレードは、よりスポーティーなサスペンション・セットアップとなり、その一例としてビルシュタインのダンパーが与えられている。これにともない価格も上昇。予想よりも安価だったが、£850(17万円)のアップとなる。
どんな感じ!
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先に結論から言おう。排気量が大きくなったぶんだけの
‘旨味’ が増している。
LSDとストラット・ブレース、ビルシュタイン製ダンパーを装着したスポーツ・グレードをテストした結果、心から優れたクルマであると思えた。マツダはこれまでのなかで最良の電制アシスト・ステアリングを開発した。クイックでありながらオフセンター付近も正確。 ドライバーを歓喜させる正確性を確保しながら、速度に依存しない精緻さを携えている。
2.0gになることによって重くはなっているものの、鼻先はことのほか軽く、明確に先代より身のこなしは軽快になった。
アクセルをどれくらい踏み込み、あるいはどれくらい緩めれば、どんな挙動を示すのか。細やかに調整しながら、思ったとおりに向きが変わる体験は、普通あまりできない。
ビルシュタインのアシに変わったことで、ボディの動きを極力抑えたうえで、コーナリングをこなすかと思いきや、意外にシャシーはデリケート。ロールをわずかに許容する性格である。ただこのセッティングは実に絶妙。1.5gよりは硬いものの、フランスのテスト・ルートでは、バンプやキャンバー、ジョイントを最低限の動きにサラリと抑えこむ。
£850(17万円)を追加投資したからといって、ギュッとハンドルを握っていなければおっかなくなってしまうほどのパワー増強がなされていないのは事実だが、出力増加分は確かに感じ取ることができる。
1.5gよりも低い回転域からトルクが湧きあがるおかげで、スロー・コーナーの脱出時でも速い速度域に素早く復帰できるのもいい。
2.0gユニットそのものはもう少し煮詰める必要があるし、6速MTもこのユニットに合わせた煮詰めが必要だということは否定しないが、現時点でもプッシュすればするほど喜んで応えてくれるエンジンであることは間違いない。リア・タイヤの高いグリップ力も頼れる存在だ。 キャビンは先代よりもコンパクトになり、着座位置はセンター側に15mm、下方に20mm移動している。ほとんどリア・アクスルの上に座るかたちだ。
パーフェクトな重みのペダルとしっくりする位置にあるギアレバー、そしてシート。3点の配置は限りなく吟味されており、快適だと感じる。
一方、ステアリングのリーチ調整はできないため、これが長身の人間にとって唯一の、そして現実的な欠点になっている。
前後方向が短くなったキャビンは、座ったまま幌が開閉できるという嬉しいアドバンテージをもたらしている。そのうえ、高速道路の速度域でも髪がかき乱されることはないし、大声を張り上げて会話する必要もない。
幌単体が驚くほど軽いおかげでたったの5秒程度でサクッと開閉できるのもいい。
キャビンはBMW Z4やアウディTTの世界観に比べると劣っているものの、ロードスターが掲げるプライスを考えると不満はない。
プリ・プロダクション版であるにもかかわらず、仕上がりは良く、やわらかい手触りのプラスティック・パーツや、スイッチの配置など、細部まで配慮が行き届いているのもいい。
一番手に入れやすいSEトリムでは我慢しなくてはならないが、SE-L以上のトリム・レベルにはとても使いやすいインフォテインメント・システムが標準でつく。
センター・コンソール上にあるiDrive風のロータリー・ダイアルでコントロールするのだが、シンプルで操作しやすい。
荷室容量はこれまでより20g小さい130gにとどまるが、四隅が直角に交わっているため、荷物の出し入れや整理がこれまでよりもしやすいと感じた。 2シーター・オープンの購入を考えているならば、無視することは極めて難しいモデルといえる。
最終的な結論は、英国内の悪路と峠を攻め込んだのちに出したいが、このプリ・プロダクション版に乗るかぎり、かなりの競争力が見込めそう。ミニ・ロードスターやZ4、TTほどの自己主張を得意とはしていないものの、運転する楽しさや費用対効果は中でもトップ・レベルであることは間違いない。
1.5gと2.0gのどちらを選ぶかに関しては、ドライビングを楽しみたいならば1.5g、オープン・トップを味わいたいならば2.0gといった別れ方になるだろう。
これまでの英国のマーケットを観察すると、より大きいエンジンの方が売れているが、この世代に関しても同じ結果になるだろうとマツダは考えている。
どちらの排気量を選んだとしても、コーナーのスリルは確約してくれるが、こちらの2.0gの方が、より早い段階でスリリングな領域に踏み込めることをお伝えしておく。 |