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デザインは歴代モデルで最高の仕上がり
ロードスターのデザインはとても素敵だ。歴代モデルのなかで文句なしに最高の仕上がりだと思う。先代よりコンパクトになっているのに、存在感は明らかに増しているし、より大人っぽく、より艶っぽくなったのも僕としては大歓迎だ。昼間の太陽の下で見るロードスターも素敵だが、夕暮れ時の艶っぽさといったらもうハンパじゃない。複雑な構成の面に光が映り込むことでボディの立体感がさらに強調され、抑揚のある陰影がなんともいえない情緒感を伝えてくるのだ。 プロのカメラマンさんはそのあたりを計算し、たとえ日中の撮影であっても、光の角度や周囲の映り込みを考慮しながら、ロードスターがもっとも美しく見える瞬間を見事に切り取ってみせる。 |
皆さんがこのページでご覧になっているのはある意味ベストショットなわけで、屋内のショールームやディーラーの店頭で見ると、これほどの艶っぽさは感じないかもしれない。でも心配は無用だ。実際に所有し、様々なシチュエーションで付き合えば、時間や天候や周囲の景色によって様々に変化する愛車の表情にどんどん惹かれていくに違いない。 そんな新型ロードスターのカッコよさを骨の髄まで味わいたいなら、映り込みや光線状態で表情が大きく変わるボディカラーを選ぶといい。ソウルレッドはもちろん、ブラック系やブルーリフレックスマイカあたりもオススメだ。一方、従来のロードスターオーナーで「新型はちょっと大人っぽくなりすぎたな」と感じている人はホワイト系を検討してみて欲しい。映り込みが少ない分、歴代ロードスターに共通する「いかにも運動神経がよさそうなプロポーション」がより強調されるからだ。僕がもしロードスターを買うなら、新型の魅力を120%味わえるソウルレッドプレミアムメタリックを第一候補に据えつつ、“素”の魅力を巧みに表現しているセラミックメタリックと大いに悩むだろう。 |
すべてのグレードにシートヒーターを!
ロードスターのグレードは3つ。安い方から「S」、「Sスペシャルパッケージ」、「Sレザーパッケージ」となる。Sは6速MTのみだが、スペシャルパッケージとレザーパッケージでは6MTに加え6ATも選べる。 上に行けば行くほど装備内容が充実していくのは当たり前のことで、これ自体に文句はない。ただし、レザーパッケージ以外ではオプションでもシートヒーターが選択できなくなるのは大いに不満だ。詳しくは後述するが、Sの乗り味はとてもいい。日常メインでライトウェイトスポーツを味わうのには最高のグレードである。ところが、Sを選んだ瞬間に、オープンカーにとって必須アイテムともいうべきシートヒーターが欲しくても手に入らなくなるのは何とも惜しい。オートエアコンや、ボーズのオーディオも選べない。ポルシェのようにフルオーダーが可能になれば最高だが、少なくともシートヒーターぐらいはすべてのグレードに用意しておいて欲しい。 インテリアの質感が大幅に向上したのも新型ロードスターのトピックだ。プレミアムカーではないから高級な素材をふんだんに使っているというわけではない。けれど、ダッシュボードやドアトリム、ステアリング、シートといった大物パーツだけでなく、シフトノブ、メーター、エアコン吹き出し口、カップホルダーといった小さなパーツにまで、エンジニアの機能へのこだわりと、デザイナーの美意識がしっかり行き届いている。Sだとエアコンのダイヤルスイッチ&エアコン吹き出し口のベゼルが地味なブラックになるが、これは購入後にパーツ単位で発注することで、自分でも簡単にアップグレード可能だ。 |
1.5Lエンジンの動力性能は充分か?
まずはレザーパッケージの6MTを選択。これでもかというほど低い着座位置と、ほぼ垂直にレイアウトしたステアリングが、スポーツカーに乗っているんだという実感をリアルに伝えてくる。着座位置が低いためさすがに楽ラクと乗り降りできるとは言えないものの、サイドシルの幅は控えめだし、シート形状も必要以上にサイドサポートが盛り上がっていないため、本格的スポーツカーにしては気軽に乗り降り可能だ。 シートに座りステアリングに手を伸ばす。ステアリングはチルトのみでテレスコピックはない。人によってはテレスコが欲しいと感じるだろうが、身長170cmの僕の場合、最小の調整でドライビングポジションはバッチリ決まる。足元が広々していて、アクセル、ブレーキ、クラッチの各ペダルが理想的な場所に配置されているのも大きな魅力だ。ただし、シートの上下調整が角度のみで行うタイプなので、小柄な人はシートをもう少し高い位置に調整したいと感じるかもしれない。 2Lから1.5Lにダウンサイズし、なおかつ過給もしていないエンジンに対し、動力性能的にどうなの? と思う人も多いだろう。僕もそうだった。だが、走りだしてしまえば動力性能に対する心配はあっという間に消え去る。太い低中速トルクは常用域で優れた反応を示すし、上まで回すと約1トンという軽量ボディは「スポーツカー」の名に恥じない勢いでグイグイ加速していく。 もちろん、300psとか400ps級のスポーツカーのような圧倒的な加速はないけれど、そもそもライトウェイトスポーツにそういったテイストを求めるのは野暮というもの。適度なパワーだからタイヤもそこそこのグリップで事足り、だからサスペンションやボディにかかる負荷が少なくなり、軽く作れるからだ。いたずらにパワーを上げてしまったらライトウェイトスポーツではなくなってしまう。新型ロードスターの軽量ボディと1.5Lエンジンは、ライトウェイトスポーツのオーナーが求める動力性能水準を十分にクリアしている。それどころか、サウンドやトップエンドに向かって上り詰めていくパワーフィール、高回転域でのスムースさを含め、期待以上の気持ちよさを実現していると自信をもって報告できる。 |
過去3代のロードスターとは次元が違う
サスペンションで驚いたのはしなやかな乗り味だ。その独特の感覚は走り始めの10メートルでわかるほど。10km/hとか20km/h程度の極低速でも足が路面にきれいに追従している様子が伝わってくる。ダンパーを含め、サスペンション系のフリクションを徹底的に管理し、なおかつダンパーが仕事をしやすいよう、ボディ側に十分な剛性を確保したからこその上質な乗り味である。こうしたフィーリングを味わえるオープンスポーツカーの代表格はポルシェ・ボクスターだが、その半分以下の価格でしかない新型ロードスターが、ボクスターに通じる上質感、気持ちよさを備えていることに正直驚いた。言い換えれば、走り出しの10メートルで、新型ロードスターが、過去3代のロードスターとは質的に異なる次元に達しているということを確信できた。 足がしなやかに動くのと、サスペンションが柔らかいのは必ずしも同じものではない。事実、ロードスターはペースを上げてワインディングロードを走らせても実に気持ちのいい体験をもたらす。箱根、伊豆周辺を思い切り走ったが、走り込めば走り込むほど、ロードスターの本拠地はやっぱりワインディングロードなんだなと思ったほどだ。 ステアリングの反応はシャープだが、ドライバーの期待を超えてキュッと曲がるような尖ったものではない。むしろシャープなのは重量、前後重量配分、重心、低ヨー慣性モーメントといったクルマ全体が醸しだす挙動であり、それを、初期応答をやや抑え気味にステアリングで中和しているという印象。結果として、インに切れ込みすぎることも、アウトに膨らむこともなく、ドライバーの意図通りのラインを見事に、嬉々として描く特性に仕上がった。S字の切り返し時の動きなどはもう鳥肌が立つほど。ノーズどころか、クルマ全体の重さをまったく感じさせない動きは、他のクルマではちょっと味わえないものである。 |
「楽しく走ること」重視なら「S」がおススメ
ベースグレードのSは、リアのスタビと、ボディ補強用パーツ(トンネルブレースバー)の一部を外している。と聞くと、ああコストダウンしたのか・・・と思うかもしれないが、断じてそうではない。スペシャルパッケージとレザーパッケージのMT車が、サーキットを含めた限界走行時の操縦安定性やトラクションを考慮した仕様であるのに対し、Sが重視しているのはあくまで一般道路走行。そのためリアのスタビライザーを外して積極的にロールをさせるセッティングを施した。ボディ補強パーツを取り外したのも、コストダウンのためではなく、サスペンションセッティングとのバランスをとるためだという。 事実、Sで走るワインディングロードはゴキゲンだった。限界の7〜8割といった「気持ちよく飛ばす」程度の走りでは、むしろ上位グレードよりも動きは素直だし、荒れた路面ではスタビがない分、接地感も高まる。ステアリングを切り込むたびにスーッと自然なロールが起こるから、横Gのレベルを感じやすいのも運転している実感を高めている理由のひとつだ。 たしかにコンマ1秒のタイムを削り取っていこうと思ったら上位グレードのほうが有利だ。しかし、スポーツカーはレーシングカーではない。「速く走ること」ではなく「楽しく走ること」を重視するのであれば、Sを選択する意味は大いにある。もちろん、人によって楽しさの定義は違うから、どちらを楽しく感じるかも人それぞれだが、少なくとも僕は良好な乗り心地を含めSの味付けが大いに気に入った。売れ筋はスペシャルパッケージのようだが、もし試乗するチャンスがあれば、ぜひ一度Sに乗ってみることをオススメする。そうすれば「手抜き」グレードではないことを理解できるに違いない。 |
ATを選ぶか、MTを選ぶか?
6速ATを選ぶと、スペシャルパッケージにもレザーパッケージにもリアのスタビとボディ補強パーツは付かない。そのことからも、6MTの両グレードが本格的スポーツ走行を重視していることがわかる。つまり、ATを選ぶと上位グレードでもMTのSとほぼ共通のキャラクターになり、レザーパッケージを選択すればシートヒーターも手に入ることになる。とはいえシートヒーターのためにATを選択するのは非現実的。ATorMTは、やはり走りの違いを念頭に置いて決めるべきだ。 トルコン式6速ATはマツダ独自のスカイアクティブ・ドライブではなくアイシンAW製だが、ロックアップ領域が広く、一般的なトルコン式ATと比べるとダイレクト感はかなり強い。電光石火のごとき変速スピードを含め、デュアルクラッチにも負けないドライビングプレジャーを得られるのが自慢だ。それでいて、デュアルクラッチがやや苦手とする極低速域ではトルコンならではのイージーさがちゃんとある。コンパクトなボディを含め、運転があまり得意ではない奥様にもためらうことなくキーを渡せるのがATモデル最大のメリットだ。もちろん、疲れているときや長い渋滞時でも、ATのもつイージードライブ性は大きなアドバンテージになる。一方、ワインディングロードなどではパドルを使った小気味よいシフトも可能だ。 とはいえ、MTと乗り比べてしまうと運転する歓び、自分が積極的にクルマを操作しているという実感はどうしても希薄になる。今のところ、約75%のユーザーがMTを選択しているそうだが、その結果を聞いて、うんうん、さすがロードスターオーナーはドライビングプレジャーのなんたるかをよくわかっているな、と思った。スタイルとしてライトウェイトスポーツを楽しむのであればATも悪くない。が、せっかくロードスターのようなクルマに乗るなら、ここはMTを第一候補にしておくことをオススメしたい。 |
249万5000円〜という価格設定は驚異的に安い!
規模の競争がますます厳しくなるクルマ産業において、ロードスターは、まさに奇跡のクルマだ。200万円以下のグレードもあった初代、2代目と比べて値段が高くなったという批判の声もある。しかし、仕上がりや装備レベル、消費税の違い等々を考えれば、新型の249万5000円〜という価格設定は驚異的に安い。 というのも、ロードスターは縦置きエンジンのFR車。専用エンジン、専用トランスミッション、専用プラットフォームを必要とする、きわめて高コスト体質のモデルだからだ。他メーカーにしてみれば、どうやったらこれほどの本格的スポーツカーを、これほどの低価格で提供できるか不思議で仕方がないといったところだろう。事実、200万円台そこそこで専用プラットフォームをもつFRスポーツカーを出しているメーカーなど他にはない。他にはないからこそ、ロードスターは26年間4代にわたって多くの人から愛され、2シーター小型オープンスポーツカーの生産台数世界一としてギネス記録を更新し続け、間もなく累計生産台数100万台に達するメガヒット作になったのだ。 そんな、他車では絶対に味わえない魅力をもつオンリーワンの存在であることが、ロードスターのまずはいちばんの魅力である。そして今回、マツダは4代目のロードスターで、オンリーワンの魅力にさらに磨きをかけてきた。デザイン、質感、快適性、走る歓びは文句なし。加えて、この種のクルマを購入する際の障害となる使い勝手に関しても、片手でスッと開閉できるソフトトップや、機内持ち込みサイズのキャリーを2個収めるラゲッジスペースなど、ユーザーの立場にたった心憎い気配りを施してきた。 |
作り手からの強いメッセージがある
もちろん、それでも2人しか乗れないクルマを購入するのには思い切りが必要だ。しかし、荷物がほとんど積めないホンダS660と比較すると、ロードスターは少なくとも独身やカップルならファーストカーとしても使える必要最小限の実用性を確保している。普通のクルマに乗っている人からすると、とんでもなく使い勝手の悪いクルマだと感じるだろうが、20代のとき初代ロードスターに乗っていた経験から言えば、買ってしまえば案外何とかなるもの。 そしてここが重要なポイントだが、ある種の割り切りをしてロードスターのようなモデルを手に入れると、クルマに対する概念がガラリと変わる。A地点からB地点までの移動に使う便利な道具である以上に、A地点からB地点までの移動の時間をいかに楽しく過ごすか。さらに言うなら、クルマを趣味の一部として生活にとりいれることの素晴らしさにきっと気付くはずだ。 もともとロードスターに興味がある人にしてみれば、スポーツカーに乗る意義の説明など、何をいまさらという感じかもしれない。けれど、クルマの道具化が進み、趣味性を求める人がどんどん減っているいまだからこそ「クルマ」という商品を再定義することが求められているのだと僕は思う。ガレージに収まっている姿を想像するだけで気持ちが高ぶり、走らせれば魂が震え、ひいては人生を楽しく豊かにしてくれるもの。誰が言ったか「一台のスポーツカーは風景を変える」という言葉がある。平凡な風景であっても、そこに一台のスポーツカーがあるだけでグッと色づいて見える。それと同じように、一台のスポーツカーは間違いなく人生を彩るスパイスになる。クルマはもっともっと楽しくなるんだ。ロードスターから感じるのは、そんな作り手からの強いメッセージであり、また将来のクルマの在り方に対する希望でもある。 |
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スペック例
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【 S 】 全長×全幅×全高=3915mm×1735mm×1235mm ホイールベース=2310mm 車両重量=990kg 駆動方式=FR エンジン=1.5L直列4気筒DOHC直噴 最高出力=96kW(131ps)/7000rpm 最大トルク=150Nm(15.3kg-m)/4800rpm トランスミッション=6速MT サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式
後:マルチリンク式 タイヤサイズ=195/50R16 JC08モード燃費=17.2km/L 使用燃料=プレミアムガソリン 車両本体価格=249万4800円
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【 S レザー パッケージ 6MT 】 全長×全幅×全高=3915mm×1735mm×1235mm ホイールベース=2310mm 車両重量=1020kg 駆動方式=FR エンジン=1.5L直列4気筒DOHC直噴 最高出力=96kW(131ps)/7000rpm 最大トルク=150Nm(15.3kg-m)/4800rpm トランスミッション=6速MT サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式
後:マルチリンク式 タイヤサイズ=195/50R16 JC08モード燃費=17.2km/L 使用燃料=プレミアムガソリン 車両本体価格=303万4800円
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